DDB(ドイル・デーン・バーンバック)を知らないモグリな広告人におすすめ。1時間で読めるDDBのVWビートル広告集『クルマの広告』
Book, Amazon, Advertising Comments (2) | Trackbacks (0)以前のエントリーで取り上げた天野祐吉さんの対談集『広告も変わったねぇ。』。
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広告も変わったねぇ。「ぼくと広告批評」と「広告の転形期」についてお話しします。 インプレスジャパン 2008-11-28 |
この本の天野さんと杉山恒太郎さん(電通常務取締役)との対談のなかに、次のようなやり取りがあります。
広告で世の中の価値を転換したDDB
杉山:きょう天野さんと話すからと思って少し考えてきたんだけど、ぼくはいまもういちど、60年代にアメリカでDDBがやったフォルクスワーゲンの「Think small.」みたいなものから学ぶべきだと思うんですよね、広告は。当時、アメリカでは、みんなが「これが男らしくてかっこいいんだ!」って思ってデカい車に乗ってたわけでしょう? そこにDDBが「いや、小さいほうがかっこいいんだ」といって、あっというまに世の中の価値を転換してしまった。あの頃に広告をやっていた人たちは、本気で、そうやって広告で世の中の価値を変えていけると思っていたはず。まぁ、幸せな時代といったらそれまでだけど、でも、そういう姿勢というか、精神みたいなものも含めて、とくに若い人には、かつてDDBがつくった作品を勉強してほしいんですよ。
天野:DDBは本当に傑作をたくさんつくってるなぁ。フォルクスワーゲンだけじゃなくて、レンタカー会社のエイビスとか。エイビスは業界第2位だったんだけど、「われわれは2位だからこそ、いいサービスができる」といったことを、広告でいい切るんだよね。そういうやり方は当時はまだなかったから、みんなびっくりした。しかも、「2位だから、われわれはテレビCMができません」とかいってね、雑誌広告に黒いテレビ画面のビジュアルを出したりするんだから(笑)。おとなのユーモアがあるんですよね、すごく。
天野:DDBのやり方っていうのは、そういう大きい企業や、業界1位の企業のやり方を批評するというか、権威主義をとことんやっつけるやり方が多いよね。なのにユーモアがあるから不快感を与えない。あの手法は当時、日本でもみんな真似したがったけれども、いまも昔も日本では、“2位の手法”で広告をやらせてくれるような企業があまりないでしょう? まぁ、エイビスのキャンペーンだって、最初は広告主の幹部から反対があったらしいけど。
杉山:ですよね。でもやっぱり、上手なコンテクストをつくって、うまく世間の価値観をひっくり返しちゃうのが、広告の最大のダイナミズムだと思うんですよ。テレビCMやポスター、コピーなどはそのための手段であって、目的じゃない。若い人には、そういうことを忘れないでほしい。こんな話をすると、口うるさいおじさんになっちゃったよな、と自分でも思うけどさ(笑)。まぁ、ほかにいってくれる人もあんまりいないから……。広告って、やっぱりアイディアと表現なんですよ。しょっちゅうは起きないけど、ビッグアイディアが見つかると、いろんなマーケティングとか科学とかを、一瞬のうちに超えちゃうことがある。そういうことを、どこかで夢というか、希望をもっていないと。
天野:社会のなかのこわばった常識をひっくり返していくような批評精神が、DDBにはあった。でもいまはウィリアム・バーンバックっていうか、DDBをね、知らない若い人もずいぶん出てきたでしょう?
杉山:いや、もうほとんど知らないと思う。教える人がいなくなっちゃったから、知るよしもないので。
天野:うーん、広告人でDDBを知らないってことはね、日本人で坂本龍馬を知らないとか、織田信長を知らないみたいなもんですよ。杉山さんたちには、ぜひそういうものを若い人たちに伝えていきながら、コチコチな経済大国的思考の回路を切り替える役割を担ってもらいたいですね。
私、恥ずかしながらこの本を読むまでDDBって広告会社のことをまったく知りませんでした。
そんなわけで、『広告も変わったねぇ。』を読んで以降、頭の片隅に「DDBってどんな会社なんだろ? ちょっと調べてみたいな」という気持ちが湧き上がっていたのですが、今年の初めごろにたまたま立ち寄った本屋さんで運良くこの本と出合いました。
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クルマの広告―大人のための絵本 (ロング新書) ロングセラーズ 2008-12 |
かなり前に読んだ本を紹介する形となってしまって恐縮ですが、本当に良い本なので(にも関わらずそれほど広告業界で話題になっていない気がするので)今さらですけどあえて紹介させていただきます。
この本は簡単に言ってしまえば、一冊丸ごとDDBが手がけたフォルクス・ワーゲン・ビートルの広告集。とにかく最初から最後までフォルクス・ワーゲン・ビートルのグラフィック広告であふれています。
でもまったく単調な気がしないのが、この本のすごいところ、というかDDBの手がけた広告のすごいところ。ひとつの商品でもアイデア次第でこれだけの訴求方法の違いや表現のバリエーションがあるんだな、と勉強になるはずです。とくにこのブログの海外広告ネタを気に入っていただいている方には、自信をもっておすすめします。
しかも、この本の良いところは単に作品集で終わらない点。巻末の「あとがき」にも非常に参考になる話が隠されています。
例えば、バーンバック社長が広告哲学について語った以下の発言なんて、当たり前なんだけど、広告に携わったことのある人ならかなりググッと来るはず。
実に簡単明瞭なことです。二つの部分から成っておりましてね。
第一は、売ろうとしている商品についていわなければならない重要なことを発見すること――です。その商品が、競争商品に立ち向かえるだけの優秀性、あるいは相違点を真剣に追求すること――です。
それがない場合には、クライアントと相談してそれをつくるのです。私たちは、何度もそうやってきました。私たちは、常にいうべきことを捜し求めます。私たちが創業した当時は、いうべきことを見つけたら、それで仕事は終わったと考える代理店がほとんどでしたが、私たちの信念はそうではなくて、その段階だと、仕事は始まったばかりだとしかいえないと考えていたのです。
そこで、私たちの広告哲学の第二の部分はこうなります。
いうべきことを発見したら、それが記憶され、行動を起こさせるように、覚えやすく、芸術的で、説得力のあるいい方をしなければならない――ということ。
私たちは、それを独創的で、新鮮で、想像力を豊かに表現する方法を捜し求めます。前にも使われたようないい方をしたのでは、せっかくの衝撃力を台なしにしてしまうことになります。
そして、コンペ以外に広告代理店を選ぶ方法なんてないと考えている固定観念に縛られた広告主さんにとっても、以下の話は目からウロコもんの話だと思います。
VWビートルがDDBへたどり着いた経緯は―― VWドイツ本社は1959年春、米国VW社の総責任者として、K・H・ハン氏を送り込みました。生粋のオーストリア人で、まだ30代半ばの若さでした。着任早々、ハン氏は、新しい広告代理店を物色し始めました。ソニーの盛田副社長(当時)から聞いたところによると、ハン氏は一年分の雑誌・新聞をめくり、自分が気に入った広告を切り抜き、それらをつくった広告代理店を秘書に調べさせたと。切り抜かれた広告の70%がDDBによってつくられたものでした。
こうして、二十世紀最幸なカップルが生まれました。
ネッ、読みたくなってきたでしょ?
1時間で読める本なので、興味のある方はぜひ読んでみてください。



市川伸一(

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