広告の目的って何でしょう?
おそらくそれは1つしかありません。広告主の売上増加にいかに貢献するか、それに尽きるのではないでしょうか。
例えば、商品の購買や資料請求といったダイレクトレスポンスは、そのものズバリで短期的な売上増加を目指すものでしょうし、ブランディングだって結局は中・長期的な売上増加を目指すものです。
ところが、広告の効果を語るときに、往々にしてこのダイレクトレスポンスと(エンドユーザーへの)ブランディングという二元論で話が進むことが多いことに、私は少々違和感を抱いています。
果たして、広告主の売上増加に影響を与える広告効果ってダイレクトレスポンスとブランディングだけに絞っていいものなのでしょうか?
例えば、以前お会いしたとある企業の社長さんは、こんな話を私にしてくれました。
「我々が広告を出す意味として、取引先企業が私たちのことを知ってくれるという効果があるんだよ。例えば営業マンが販路拡大のために、これまで取引のなかった販売店へ出向く。相手がこちらの会社を知っている時と知らない時の対応は歴然と違ってくる。広告にはそうした営業マンへの後方支援の意味合いもあると思っている。それをわかってない人が意外と多い。ブランディングというと、エンドユーザーとの関係構築だけしか見ていない人がいるが、決してそうじゃない」
この話を聞いて、私はちょっと恥ずかしくなりました。だって、この社長が指摘するダメな広告の捉え方こそが、当時私が信じていたものだったからです。
当時の私は「インターネット広告はリーチは狭いですが、その分見込み客だけを的確にターゲティングできます。マス広告のような広告の無駄打ちはありません」なんて話をしていましたが、それって実は結構近視眼的な捉え方でもあります。
一見すると無駄打ちに見える広告が、実はどこで効いているかなんて、本当は広告主の社内全体を見回さないと見えてこない部分もある。この社長の言葉には、短絡的に「インターネット広告>マス広告=当たり前の法則」と考えていた私へ気づきを促すものでもあったのでしょう。
そして、広告の計り知れない効果の1つに、社内への影響というものもあります。
最近読んだ『ウェブ時代 5つの定理』に、アップルの現CEOであるスティーブ・ジョブスの次のようなコメントが掲載されていました。
私が帰ってきたとき、アップルは自分たちが何者なのかを忘れてしまっていた。
「Think Different」キャンペーンを覚えてる?
それは確かに顧客向けのものだったが、アップルのためのキャンペーンという意味合いがもっと強かった。あの広告は、自分たちの英雄は誰なのか、自分たちは誰なのかを思い出させた。会社はときどき忘れてしまうんだ。
幸運にも私たちは目を覚ました。
そして今アップルは歴史上最も素晴らしい仕事をしている。
つまり、広告は社外に向けたメッセージと誰しも捉えがちですが、時には内なるメッセージとして活用し、社内の人間の自分たちはどうあるべきかというコンセンサスを強化し、士気を鼓舞することにも利用できます。
得てして、今の広告の効果は、直接的に数値化しやすいものを重視する傾向がありますが、実は数値化しづらい部分にもこんな効果があるのではないでしょうか(もちろん、数値化できる効果を重視するのは重要なことで、それを否定する気はありませんが)。
最近、広告の効果をいかに計るかということが頻繁に語られますが(エンゲージメントをどう数値化するかなど)、一方では広告マンにしても広告主にしても、こうした数値化しづらい効果にも目を向けなければ、互いに広告の効果を過小評価してしまい、結局は最大の効果を得られないようになるのではないかという気がしてなりません。
それこそ、広告の効果については、少し前に流行って最近では耳にすることも少なくなった「複雑系」という考え方に近い捉え方をする必要があるのかな、とも思います。
それにしても、たかだか広告のくせに、広告ってやけに複雑系ですよねぇ。でも、だからこそ面白いんだろうな、ウン。
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ウェブ時代 5つの定理 この言葉が未来を切り開く! 梅田望夫 文藝春秋 2008-02-28 |





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