足し算文化のWeb業界は、引き算文化の業界から多くを学ぶ必要があるのでは?

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1月21日に「NBonline(日経ビジネス オンライン)」にアップされた記事なので、「なぜ今更」という感じですし、すでにお読みになった方も多いかもしれませんが、かねてからぜひ深掘りしたいと思っていた記事なので、あえて今回取り上げたいと思います。

・佐藤可士和が語る“クリエーティブから見たインターネット” (トレンド):NBonline(日経ビジネス オンライン)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/nmg/20080117/144763/

こちらは佐藤可士和さんのインタビュー記事ですが、このなかで佐藤可士和さんが言っている以下の内容について、個人的にも以前から思うところがあります。

 Webサイトのデザインは成熟度でいったら、まるっきり低い。インターネットは世に出てきてからまだ10年そこそこなので、仕方がないことだと思いますが。雑誌にはすごく長い歴史があり、そのデザインについては語り尽くせない歴史があります。それに比べて、インターネットはまだ始まったばかり。まだまだ創世記です。

出版業界で雑誌編集者をした後にネット業界に入った私としても、やはり佐藤可士和さんの言うように、Webサイトのデザインは雑誌に比べて明らかにレベルが低いと言わざるを得ません。

しかも、それはデザインだけの話ではなく、総合的に見てもレベルが低い。それは、やはり佐藤可士和さんの発言にもあるように、歴史の違いというものも歴然としてあるのだろうと感じますが、それに加えてコンテンツの制作手順の違いや媒体の特性というものがあるのだと感じています。

ご存知のように、雑誌と言うのは基本的に写真(イラスト含)と文章という2つの要素で構成されているわけですが、まず編集者が使いたい写真素材と大まかな文章量をデザイナーに伝え、それを基にデザイナーが一番美しく見えるデザインでレイアウトを組んできます。

その後、レイアウトを受け取った編集者(ライター)は、そのレイアウトにあわせて文章量を調整して原稿を書くことになる。これを出版業界では“先割り”と呼んでいて、ほとんどの雑誌の制作手順はこの方法が取られている。

ではなぜ、そんな手順を踏むのか? それは、決してそちらの方が楽だからというわけではありません。逆に文章を書く側からしたら、決まっている文字数にあわせて原稿を書く必要があるので、こんなに大変なことはない。先に原稿を書いて、それにあわせてデザインをしてもらう“後割り”の方がいい。それでも“先割り”でレイアウトを決めるのは、人が雑誌を手にしてどういう風に行動するかを考えた結果です。

雑誌を手に取った読者は、ただ記事のタイトルだけで判断して原稿を読むわけではありません。ほとんどの場合、記事のタイトルに興味が湧き、全体のレイアウトが美しいと感じ、個々の写真に魅力を感じ、最終的に原稿を読むという行動に移ります。

ですから、どんなに良い原稿を書いても、読まれなければ意味がないので、人が美しいと感じるレイアウトになるように先にレイアウトを決め、後からレイアウトにあわせて原稿を書いていくことが重要になる。

ところが、Webサイトの制作手順はどうなっているのか? 多くの場合“後割り”方式で、写真や文章などの素材を準備してから、最終的にレイアウトをガッチャンコと組み合わせることが多いような気がします。

さらにWebサイトのデザインで問題なのは、枠の制限がない点。

雑誌であればA4判ならA4判でその枠内におさめる必要があるので、必然的に引き算が必要になる。本当は写真を4点使いたいけど、それではレイアウトが崩れるから3点にしようとか、本当は文章をもっと延ばしたいけれど、それでは写真が小さくなってしまうので、この部分について書くのはやめようという形で、本当に必要な部分以外を削ぎ落としていく。こういう作業が逆に洗練されたコンテンツを生み出していく。

それに対して、Webの世界は基本的に足し算の文化。企業のWebサイトでも、自社商品の魅力をだらだらと書き並べているせいで、どれが一番の商品のウリなのかユーザーにまったく伝わらなくなっているケースも多い。

そして、後から継ぎ足し継ぎ足ししたせいで、デザインが崩れたり、サイト構成がよくわからなくなっているサイトも散見される。

Webの世界は紙面(誌面)スペースや放送枠といった制限がないことが利点の1つと言われますが、そうした制限のなかでコンテンツ制作をしてきた人間にとっては、実はそれこそがWebの最大の弱点であったりもするのです。

特に日本は、俳句や短歌といった自ら制限を設けることで、洗練された芸術を作り上げてきた国でもあります。

制限がないから足していくという発想だけではなく、制限がないからこそ自らに制限を設けて引き算を習得していくという姿勢がないと、今後のWeb業界はただ散漫なコンテンツを製造するだけの場所にも成りかねないと思います。

それこそ、佐藤可士和さんがインタビューのなかで語っているように、

 みんな、インターネットには情報がたくさんあることがいいことだと思っていますが、よくよく考えるとやっぱりつまらないものがたくさんあってもうれしくない。ゴミをたくさん集めても仕方がないのです。

ということ。情報はたくさんあればいいというわけではありません。引き算をしないと、ユーザーにゴミ箱の中から必要なものをあさらせることにも成りかねない。

そうした意味では、私もブログでこんなに長々と駄文を書いていないで、「Twitter」や「はてなブックマーク」のコメントなど決められた文字数のなかで書く訓練でもした方がいいのかも、と最後にちょっと自戒したりして。。。

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